「あそこだ・・・。見えるか?」

「え・・・あ、はい。見えますけど・・・」

その木の下には、小さな家が一軒ありました。
中は、明かりがついていて人がいる気配がありました。
どうやら、ローラは家の中に入っているようです。
二人は、小さな家の前で止まり、コンコンとドアをたたきました。
すると、緑のローブをかぶった一人の老人が出てきました。
老人は、おどおどしており、なにかにおびえているようでした。

「こんばんは。ジジイ・・・久しぶりだな。

母親が、あんたに聞くことがあるっていうからさ、この二人を。」
老人は、首を横に振りシャロウを指さしました。

「なんだよ?おれもってことか?っていうか、ローラは何処行ったんだよ。
いねえじゃねえか。」

「おじいさん。ローラさんは、もしかしてあの木の中ってことですか?」

老人は、首をたてに振りお前たちも入れといっているように、指を動かしました。
しかし、シャロウは、

「やだね!なんだよ。
母親が呼んだからなんか大切なことかと思ったけど・・・。
あの木の中に入れだぁ!?冗談もほどほどにしろよね。このクソジジイ。」

老人は、あきれつつもシャロウの背中をドンっと押しました。
すると、いつの間にかシャロウは木の目の前に立たされていました。

「え・・・?木が空気を吸っている?」

吸い込まれているのは空気。というより風でした。
風が吸い込まれてしばらくするとチラッと炎が見えました。
不思議に思ったシャロウの足はしだいに前に進んでいきます。
―真っ暗な闇の中永遠な道をたどるように・・・。
未知の世界へと・・・―



「行きましたね。二人とも・・・。
あの二人はどこの一族に入るのでしょうね?
おじいさんは、このために二人をお呼びになったのですよね。
あのお母様も素晴らしい方です。
このことを予想して、そのための準備をいろいろとしてくださったのですから。
ねぇ・・・神様?」

老人がピクっと体を動かしました。

すると不思議なことに老人の口が開きしわがれている声で少しずつしゃべり始めました。

「ほほ・・・。若いモンには負けるの。さすがにバレルとは思わなかったぞい。
お主は、この試験に臨まなくても良いのか?司教殿?」

「僕はー・・・」

クロナは自分の胸に手を置きました。
そして、目をつぶり一息つきました。
次に目を開けた瞬間、彼の目は碧眼になっていました。

「そうか・・・お主が。」

クロナは、静かにうなずきました。
そして、木の穴をじっと見て彼らが戻ってくるのをじっと見守っていました。



「〜っー・・・。いってー・・・。なんなんだよ、この落とし穴みたいのはよ!」

無様に横に倒れているシャロウが見えました。
腰をさすりゆっくりと起きあがります。
辺りを見回すとそこは、まっすぐと道がつながっている洞窟でした。
そのじめじめした道には、火がぽっぽっとついている薄暗い道でした。
上からは、小さな滴がポチャンっと地面に落ちます。

「とりあえず・・・先に進んでみるかな。」

シャロウは、歩き始めました。
歩いてくると、橋が見えてきました。
その橋は、吊り橋で火が付いたりしたらすぐにでも落ちてしまいそうなほどに古びていました。

「うっわー・・・こわ!」

下には、悪趣味にガイコツが固まりになって転がっています。
シャロウの足は、全く前に進もうとしません。拒絶しているようでした。
すると、遠くの方で足音が聞こえてきました。
その足音はしだいに近くなり、せまってくるようでした。
静かな洞窟の中聞こえてきた足音の人物は、炎で燃やされている人でした。

「? お前・・・生きてるのか?」

炎で燃やされている人物は、答えます。

「いいや。生きていない。でも、死んでもいない。
オレは、太陽族を代々守っている守護者、陽炎。ヨロシクな。
お前は、俺たち一族の仲間入りだぜ。ヒヒ・・・喜びな。
俺たち一族は、人を確実に拒むんだ。でもな、テメーには炎を操れる才能を持っている。
だから、オレは、テメーに炎を与えに来てやったんだ。」

「言ってる意味がよくわかんねーよ。
この火だるま野郎。オレは、ジジイに無理矢理入らされてここに来たんだ。
なのに、いきなり一族とか炎とか言われてもよく分かんねーんだよ!」

「ちっ。なんだよ・・・、なんも知らねーできたのか。
説明なんてめんどくせーんだ。第一、てめー、態度でかすぎ。
オレは、テメーと馬があわねえ。それに、ウゼーんだよ。
この不良男。素直に炎をあたえてやろーとしたのに・・・テメーがそういうこというんなら、お断りだ。
さぁ、どっちがいい?このガイコツたちのお仲間になるか・・・
それともオレに勝って炎を手にするか?選びな。」

「なんだよ・・・。
テメー、態度でかすぎ。お前と馬なんか合ったら、オレ死ぬし。最悪。」

「お互い様だよ。」

陽炎は、橋に手をかけました。
すると、ぼっと音をたてて火が橋につきました。

「おい、不良。」

「シャロウだ。」
「フン・・・。オレに勝ったら、呼んでやるよ。」

「勝つんだよ。おれ、強いし。」

「ほざいてろよ。この橋を渡ってみろ。
そして、オレのトコまで来たら、勝ったってことにしといてやる。」

「いってろよ。いーぜ、渡ってやろうじゃん。」



「遅いですね・・。
彼、炎の素質がおありだったのでしょう?
ならば、普通の炎の守護者なら、簡単に力をくれるはずなのですけどね?」

「ほほ・・・余計なことを言ったのじゃよ。なにせ彼は、挑発の達人じゃからの。
ワシも何回押さえてきたことか・・・。」

「はぁ・・・。大丈夫なんですかね?」

「ほっほっほ・・・。」

「そういえば、彼女の方は、大丈夫なんですかね?
彼女、どの族にも合ってなかったのですから・・・。
ちょうど、似ている素質があったのが風だった。ってなかんじですかね?
彼女、ずっと銃一本で旅をしていましたから、族なんて必要なかったんですよ。
はは・・・。」

「彼女の方は、特に心配いらんよ・・・。
挑発しないからの。冷静に判断してすぐに来るはずじゃ。」

しばらく、じっと待っていると木の穴から誰か一人出てくるのが分かりました。
そう・・・ローラです。
いきいきとした表情のまま、穴の中から、出てきました。
行ってきたときと同じ新品の服のまま。

「ほら・・・・の?」

「ええ・・・。」


橋が燃えています。

「(・・・とは言ったはいいが・・・。
こんなところ渡るなんてこと、不可能に近いだよ。
っというより、不可能だ。はい・・・)」

「どうしたんだよ。おい!渡るんじゃねーのか?」

「今から、渡るんだよ!・・・はい。」

橋が、チリチリといって今にも切れそうでした。

「・・・っ。くそ・・・たれ。」 

燃える橋を目の前にして、シャロウは走り出しました。
なんと、不思議なことに、火はシャロウを避けて、道を造り始めました。
赤透明の真っ直ぐな道を・・・。
目をつぶって走っていたシャロウは、異変に気づきました。

「(ん??ゆれねぇぞ?きれねーじゃん。おかしくね?)」

と・・・。そっと目を開けてみると、そこは火がない場所。

火の上を歩いていました。

「なんだ・・・?これ。」

陽炎は、ニヤリと笑いました。
とても嬉しそうに見えました。が・・・次の瞬間その笑みが消えました。
シャロウの集中がとぎれたのです。
赤透明の真っ直ぐな道は、消えてシャロウが真っ逆さまに落ちていく姿が見えたのです。

「うお!」

ガイコツの中に落ちていく姿が見えました。


「おっそーい。」

「そうですね。」

お茶を飲みながら、ふぅ・・・とため息をついたローラは、クロナに聞きました。

「司教・・・クロナも、この試験受けたの?」

「いいえ。受けませんでしたよ。
なにせ、僕は、司教ですから。殺生は、いたしません。」

「したじゃない。どうやって、殺したの?」

「秘密です。」

意味不明な笑みを浮かべ、老人の方に顔を向けにっこりと笑いました。


「くっそ・・・。」

陽炎は、つぶやき手で地面を押しました。
すると、落ちているシャロウは火に包まれてゆっくりと上に上がってきました。
そして、陽炎の前で火の塊は消えドスンっとシャロウが落ちてきました。

「いってー・・・」

「なかなか才能あるじゃねーか。
集中力さえ切れなけりゃ、テメーは最強になれるぜ。
キューブだって、簡単に手に入る。よかったじゃねーか。」

「どうも。お前見かけによらずいいやつじゃねーか。」

「お前も見かけによらず親切じゃねーか。
気に入った。テメーに力をくれてやる。」

「ありがとな。」

陽炎は、くるりと後ろを向き「ついてこい」というように指をちょいっと動かしました。
シャロウは、立って陽炎について行きました。


第一話「過去の話」3 第一話 「過去の話」5
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