潮騒
駆け出した君の背中を
呼び止める声がぼくにない
背を向けた憎しみが
だれのものかわからない
衝動だけの欲望を
それこそ虚構だと思って埋葬した
泣く理由にすらならない
痺れたり指先は途絶える
体温を帯びたつめたさだけ残している
回転される音源をこえて
人のいない砂浜に辿り着く
泣いているように聴こえた
辿るとそれは海だけであった
貝の死骸を耳にあて
故郷の音がしないことに安堵して
ぼくは今一度振り返る
……ああ、やっと気づいた
泣いているのはぼくであったのだ、
(062806)