銀河の原

薔薇を折る指先から
とめどなく唄はあふれる
願いにも似た祈り
唇の形をなぞりながら
ぼくは次の楽譜を待つ

雨が駆けてゆく
踏みならされる鍵盤は
ずいぶん前の色を紡ぐ
濃藍に縁取られた
瑠璃のような淡水色の奥
磨きこまれたエメラルドが
ふ、と小さくわらう

箱舟は沈んだ
ノアはもう来ない、

夏野に立ちながら泣いていた
淡くとけてゆく月を見ていた
南中した星座の名前を覚え
中心のメロット百十一をさがし
散開星団を奪い取った

宇宙の奥底を見渡せた
蒼白い炎は凍るように冷たく
ぼくの手中で揺らいでいた


(081506)